
もくじ
- フィギュアスケートは、採点競技である
- フィギュアスケートのルール簡単解説:基本編
- フィギュアスケートのルール簡単解説:応用編
- 観戦を楽しむコツは、点数にこだわらないこと
フィギュアスケートは、採点競技である

まず、押さえておきたいポイントは、フィギュアスケートは、“採点競技”であるということ。実は、スポーツにはいろいろな種類があります。
主な種類を整理してみました。
・競争競技(一番早い、高いを競う):陸上、水泳、スピードスケートなど
・対人競技(対戦して勝敗を決める):柔道、テニス、野球など
・採点競技(審判の採点で得点が決まる):体操、フィギュアスケートなど
陸上や、水泳は、一番早くゴールについた選手が優勝するという“単純明快さ”が魅力的で、おもしろい競技です。
ところが、フィギュアスケートには、そのような単純明快さを求めることはできません。
“採点競技”では、ジャッジ(審判)がいて、選手の演技を審査し、採点した結果、点数の一番高い人が優勝することになります。
例えば、「お気に入りの選手が、パーフェクトな演技をした。でも、ジャンプの転倒をしたライバルの選手が優勝してしまった。おかしいじゃないか?」と疑問に思ったとしても、対人競技ではないので、ライバル選手を責めることはできません。
あくまでも、“ジャッジが評価した結果”が、フィギュアスケートの勝敗を決めることになるのです。
しかしながら、ジャッジも人間ですから、採点する際に、まったく主観が入らないという保証はありません。そういったところが、観客の「おかしい」という感覚につながってしまう危険性があります。それが、‟採点競技”の弱点ともいえますが、まずは、‟採点競技”とは、 ‟単純明快ではない”ということを、受け入れるところから始めなければなりません。
フィギュアスケートのルール簡単解説:基本編
フィギュアスケートのジャッジは、“技術点”と“構成点”という2つの要素を採点し、この2つの合計点が総合得点となります。
『技術点』
ジャンプ、スピン、ステップなどの技術的要素を採点する。
『構成点』
スケート技術・要素のつなぎ・動作と身のこなし・振付と構成・曲の解釈
の5項目について、10点満点で採点する。
「すでに難しくてついていけない」と感じる方もいるかもしれませんが、ルールについては、すべて理解しなくても、選手の演技を楽しむことはできます。
しかし、少しだけルールに踏み込んで覚えてみようとするだけで、演技鑑賞の手助けになり、“モヤモヤ”を解消するポイントになることは確かです。
“技術点”と“構成点”という名前だけ憶えるだけでも、ルールを理解するきっかけになっていきます。
まずは、得点の内訳を気にすることから始めてみてください。
フィギュアスケートのルール簡単解説:応用編
2015~16年のシーズン、グランプリファイナルで、男子ショートプログラムの歴代最高得点(当時)を更新した『羽生結弦選手』。
スペインの『ハビエル・フェルナンデス選手』とのトップ争いは見応えがある戦いでした。
二人の選手のグランプリファイナルでのショートプログラムの点数を比較して、ルールを理解する手がかりにしてみましょう。
羽生選手 総合得点 110.95 (技術点61.81、構成点 49.14)
フェルナンデス選手 総合得点 91.52 (技術点44.56 構成点46.96)
得点を見てみると、構成点は、さほど変わりがないのに、技術点の方は、17.25ポイントも差がついています。
この時の羽生選手の演技内容は、すべての要素で、ほぼ満点の評価を得ています。歴代最高得点をたたき出したのも納得の、パーフェクトな演技でした。
フェルナンデス選手の演技内容は、冒頭の4回転サルコウジャンプの着地が乱れてしまいましたが、あとは転倒などの失敗がなく、パーフェクトな演技のように見えました。
しかし、実際は、予定していた3回転ジャンプが2回転になってしまうという大きなミスをしてしまっていたため、ジャンプのポイントを大きく減点されていたのです。
フェルナンデス選手が、羽生選手を制し優勝した2016年の世界選手権では、この2か所を成功させています。
成功させた場合の得点と比較してみると、9点ほど低い点数となってしまいました。
成功していれば、フェルナンデス選手も、100点を超える点数をたたき出していたことになります。
このように、転倒などがなく、目視上ではさほど失敗していないように見える場合でも、ジャッジが細かく判断することにより、点数が大きく減点されることがあるのです。
観戦を楽しむコツは、点数にこだわらないこと
ルールについて少しだけ勉強し、“パーフェクトに見えても、実はパーフェクトじゃないときがある”ということを理解して頂けたと思います。
そのうえで、フィギュアスケートを楽しく観戦するためのコツがあることをお伝えします。
それは、“点数にこだわらない”ことです。
「ルールを少し覚えろ」と言っておいて、「点数にこだわるな」と言われても、矛盾しているように感じるかもしれませんが、フィギュアスケートには、点数には表せない魅力というものが存在します。
それが、‟記憶に残る芸術的なプログラムを演じる“ということです。
優勝や、メダルに手が届かなかったとしても、観客の心を動かす素晴らしい演技というものが存在するのです。
ソチオリンピックの『浅田真央選手』のフリープログラム「ラフマニノフピアノ協奏曲第2番」の演技がその代表格と言えるでしょう。
試合前、優勝候補だった浅田選手。しかし、ショートプログラムでの失敗が響き、16位でフリープログラムを迎えることになったのです。
たとえフリープログラムを完璧に滑りこなし、高得点を出したとしても、優勝はおろかメダルにさえ手が届かない絶望的な状況でした。
それでもまだ、「どんな演技を見せるのか?」と、さらに注目を浴びてしまいます。
トップアスリートである浅田選手にとっても、精神的にどれほど厳しい状況であったか、計り知れないものがあります。
追い詰められて、投げやりな演技をしてもおかしくない状況です。
世界中の多くの人に感動を与えた迫力ある芸術的な演技は、このような状況下で生まれました。
結果的に、浅田選手は、6位に終わり、メダルには手が届かなかったかもしれない。
しかしながら、「困難な状況下でも、自分のできる精一杯をやりつくす」というスポーツマンシップの神髄を、アスリートとして体現してみせたのです。
技術的には、ジャンプの回転不足など、細かい減点はありました。しかし、「そんなことは、どうでもいい」と思わせるほど、人々の心を揺さぶり、多くの人の記憶に残る演技となりました。
そういった演技に出会えることが、フィギュアスケート観戦の宝物ともいえる瞬間になっていくのです。
人々の記憶に残る演技を演じた選手は、優勝やメダルにも匹敵する‟第3の勝者“とも言えるかもしれません。
フィギュアスケート選手は、技術力を競うアスリートの部分と、観客の心を動かす演技を見せるアーティストの部分の両方を兼ね備えていなければなりません。
一度に、スポーツと芸術を楽しめるということが、フィギュアスケートの最大の魅力です。
お気に入りの選手を応援しつつ、素晴らしい芸術的瞬間を待ちわびながら、楽しくフィギュアスケートを観戦してください。
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